大学進学希望者(理系)向けガイダンス @都立府中西高等学校様

都立府中西高等学校で、理系高校生を対象とした勉強法講話を行いました。

理系で大学受験を志す生徒たちに、

  • 理系大学入試で必要になること
  • 各科目の具体的な勉強法
  • 日々の勉強目標の立て方

などをみっちりレクチャーするのがメインテーマです。

以下のような二部構成で、各々90分程度。:

  1. 数学の問題にチャレンジ
  2. 夏休みの勉強計画を立てよう

生徒はみんな積極的に授業に参加してくれて、とても良い時間を過ごすことができました。

今回は、今日の講演会の内容について順番に述べていきたいと思います。

目次

第一部:数学の問題にチャレンジ

前半は、数学の問題にチャレンジしてもらいました。
A3用紙に問題文を書いておき、空いたスペースに答案を書いてもらうというもの。

私が用意した問題

用意した問題は1つだけ。まずはそれをご覧いただきましょう。

問題
n を奇数とするとき、n^5-n が120の倍数になることを示せ。

いたってシンプルな問題です。皆さんも、ぜひ一度考えてみてください!

答え(方針だけ)

n^5-n が120の倍数であることを示すのですが、この問題文に真っ向勝負しようとすると大変です。
そこで、まずは「示さなければならないこと」を細かく分けるのが大切です。

今回の問題の場合、120の倍数であることを示したいのですが、
120 = 2 x 2 x 2 x 3 x 5
ですから、

  • 2^3=8 の倍数であること
  • 3の倍数であること
  • 5の倍数であること

という3つをそれぞれ示さなければなりません。

さらに、n^5-n というのも、このままでは扱いにくいです。
倍数の問題ですので、因数分解するのが妥当でしょう。
n^5-n = n(n^4-1) = n(n^2-1)(n^2+1) = n(n-1)(n+1)(n^2+1) = (n-1)n(n+1)(n^2+1)
と因数分解することができます。

以上のように色々手を加えると、今回の問題は次のように言い換えることができます。

問題’
n を奇数とするとき、(n-1)n(n+1)(n^2+1) が

  • 2^3=8 の倍数であること
  • 3の倍数であること
  • 5の倍数であること

を示せ。

ここまで手を加えると、随分解きやすくなりますね!
あとは各々を証明するだけです。
余りに着目して表を作るなどしていくことになりますが、これ以降は省略します。

※ヒント:
<2^3=8 の倍数であること>
n が奇数なので、n-1, n+1, n^2+1 は偶数ですね。
<3 の倍数であること>
(n-1)n(n+1) は連続する3つの整数の積になっています。
<5 の倍数であること>
n を5で割った余りごとに、表を作成してみましょう。

つまづきやすい箇所

上の問題を高校生に解いてもらったわけですが、最初完全ノーヒントでやってもらったときは全員手が出なかったようです。
シンプルではあるものの難しい問題ですからね。

まず、n^5-n の因数分解をするという発想に誰も至りませんでした。
経験次第な部分ですので仕方がありません。
因数分解をしてごらん、と指示しました。
概ね正しく因数分解できていたので良かったです。

次に、先述のように示したいことを細分化して、

  • 8の倍数であること
  • 3の倍数であること
  • 5の倍数であること

のそれぞれを順番に示すように指示しました。
その三つに分けて良いという事実自体は納得してくれましたが、各々を示す方法がわからなかったようで、まだ全然解けませんでした。

そこで、3の倍数の場合に限って、私が証明しました
(n-1)n(n+1) の部分が連続する3つの整数の積であることに注目し、その3つのうちちょうど一つが3の倍数であることを、3で割った余りで表を作って説明。
これについては、納得してくれたようです。

次に、5の倍数であることをみんなで一緒に証明しました
n-1, n, n+1, n^2+1 のそれぞれを5で割った余りを、表にまとめる感じです。
3の倍数の説明をしたこともあり、この辺りから生徒は皆積極的に参加し、表の数字をどんどん埋めてくれました。

最後に、8の倍数であることを各自で証明するよう伝えました
3の倍数・5の倍数のときと同じように表を書いて考えてくれたのは良かったです。
それをサポートして表を完成させつつ、別解も示しました。
(n-1, n+1, n^2+1 が偶数だから〜という方針のもの。)
これだけで90分。

全員積極的に話し合いに参加してくれたので、とても楽しかったです。
みんなでじっくり考えながら証明したので、あっという間に時間がすぎてしまいました。
もうちょっと時間をあげたかったのですが、いくらでも時間を使えてしまうので次の内容へ。

第二部:夏休みの勉強計画を立てよう

後半は、夏休みの計画を立ててもらいました。

まず、みんなに書いてもらった

最初に、夏休みの勉強の計画を書いてもらいました。
細かい指示は出さず、自由に。
書いてもらったものを順番に発表してもらい、その後順番に細かく検討していく形式です。
ここでいう検討とは、計画の内容を掘り下げて明確化するようなイメージです。

「計画を立てる」ということ

計画を立てるというのは、とても難しいこと。

勉強の計画・目標を立てるときに重要なのは以下の点です:

  • 最終的な目標(大学合格)に即した小目標であること。
  • 実行可能な計画・達成可能な目標であること。
  • 目標達成度のチェックが可能であること。

まず、大学合格という目標を達成するための勉強である必要があります。
学校の授業の復習も大事ですが、あくまで大学受験での合格に結びつくものでなくてはいけません。
大学受験で出題されない範囲の勉強は、大学受験という観点では無意味になります。

第二に、実行可能な計画である必要があります。
例えば、「夏休み中に過去問で合格点を取れるようにする」という目標は誰でも立てられますが、大抵の場合達成不可能です。
また「1日15時間勉強する」という計画も、実行するのは困難です。
そんなに勉強しては、集中力が持続しません。

第三に、目標達成度のチェックが可能である必要があります。
夏休みの勉強計画の場合、夏休みの最後に実力チェックをする必要があります。
自分がどれくらい成長できたのかを正しくチェックできなければ、計画・目標の意味がありません。
例えば、英単語の知識に乏しい人が「夏休みは英単語を頑張る」と思ったとしても、それは意味のある目標とは言えません。

修正

以上の考え方を元にして、各生徒の目標・計画を具体化していきました。

例えば「因数分解の復習をしたい」という生徒がいたら、「学校で配られている問題集の基本問題の部分を9割以上正解できるようにする」という目標にします。
そして、「8月○日までに問題集の因数分解のところを1周し、次は残りの問題を解いていく。」という具体的な計画に落とし込んでいきます。
他の生徒も交えてみんなで話し合いつつ、内容を詰めることができました。

「苦手分野を頑張りたい」と思っているだけだった生徒も、「今自分は何がどれくらい苦手で、合格レベルに達するには何が足りないからどれくらい勉強すべきなのか」を理解してくれたようです!

注意点

勉強計画を立てる際の注意点は、「定量的に達成度を測定できるようにする」ことに尽きると思います。

生徒がやりがちな勉強計画の例は、

  • 数学で、問題を見たときにどの公式を使えるかを言えるようにする
  • 化学で、基礎的な法則・定理の意味を説明できるようにする

といったものです。
もちろん悪い目標ではないのですが、この目標は

  • 「言える」という状態の判定方法がよくわからない
  • そもそも、「言えた」として、それが大学合格に結びつくかわからない

という点で問題があります。

数学の場合で考えてみましょう。

第一に「言える」か否かの判断が曖昧になりがちです。
本当に定理の名前だけ言えれば良いのでしょうか?
「加法定理」とか「因数定理」とか言えるだけでOKなのでしょうか?

第二に、仮に「言えた」としても、それが得点に結びつくとは限りません。
例えば余弦定理を用いて三角形の辺の長さを求めるという基本問題を考えます。
問題文を読んで「余弦定理だ!」と言えても、そこからの計算はちょっと手間がかかります。
二次方程式を解く必要がありますからね。
それも突破して初めて正解となり、点を取れるわけです。

点数にこだわるというのは、受験に関しては正解だというのが私の意見です。
少々がめついようでも、徹底的に試験の点数を追求するのが重要です。
実際の試験でも、(調査書や面接を除くと)点数が全てですから。

まとめ

冒頭に掲げた数学の問題もそうなのですが、最終的な目標を細分化するというのが、勉強計画を立てるときに非常に重要になります。
受験生のみなさんは、これだけは忘れないでおいてください。
細分化したら、優先順位をつけて実行するだけです。

小目標や日々の勉強計画を立てるときは、

  • 最終的な目標(大学合格)に即した小目標であること。
  • 実行可能な計画・達成可能な目標であること。
  • 目標達成度のチェックが可能であること。

に注意しましょう。

今回の講演会では、実際に数学の問題を解いてもらってから講話を行ったこともあり、「問題の解き方」「勉強のし方」を具体的に理解してくれました。

3時間という長時間だったにも関わらず、みな最後まで真剣に取り組んでくれました!

代表取締役 林 俊介

※本プロジェクトは,(株)さんぽう様より受託いたしました。

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